「話り盡す山雲海月の情」

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こんにちは、副住職です。

 

先日、卒業以来、実に20年ぶりとなる高校時代の大きな同窓会に参加する機会がありました。

当日は大盛況。私自身も含め、多くの参加者が時間を忘れ旧友との懐かしい話に花を咲かせていました。

 

世の常として、社会に出るとどうしても肩書や所属する組織、地位などがついて回り、そうしてある程度固定化された枠を前提とした人間関係やコミュニケーションに陥りがちです。

 

しかし、久々に再会した友人たちとの間でそのようなことは重要でなく、誰もが解き放たれ、心隔てなく語らう姿がそこにはありました。

 

「話盡山雲海月情」(かたりつくす さんうんかいげつのじょう)(『碧巌録』より)

 

という禅語、ご存知の方もいらっしゃると思います。

 

お茶人が大切な客をもてなす際などに、茶室に飾る掛け軸の言葉として好んで使われることもあります。

 

山にかかる雲、海に映る月。まさに一切の心、天地自然の理。
すべてをさらけ出し、親しき者同士が腹を割って、心情、心境のありったけを語り尽くすさまを表現しています。

 

駆け引きも、取引も、飾ることもなく、まさに雲の沸き出るように、尽きない思い出話に興じる。今回の同窓会で、そんな「山雲海月の情」に思いを馳せました。

 

ちなみに、この語には前句があります。

 

「一重山盡又一重」(いちじゅう やまつきて またいちじゅう)

 

生きていく中で、困難(山)は次から次へとやってくる。それらを乗り越えながら、次第に心も体も鍛えられ、強く大きくなり、人生に深みというものがでてくる。

 

まだまだ若輩ともいえる世代ではあるけれども、これでも少しは社会に揉まれ、大なり小なりもがき苦しむ経験も重ねてきたからこそ徐々に分かってきた、いわば人生の深い「味わい」のようなもの。

 

そんな人生の「味わい」を肴に杯を酌み交わす、なんとも幸福な時間を過ごすことができました。

 

「一重山盡きて又一重、話り盡す山雲海月の情」

 

 

幹事の皆さん、お疲れさまでした!

そして、ありがとうございました!